米国ミシガン州のアンドリュース大学 (AU) より留学生を迎えて、3年ぶりに国内実地型のソーシャル・イノベーション研修 (SIGLOC-JP) が大阪公立大学 (OMU) 杉本キャンパスにて開催されました。
参加者の声
● A phenomenal education experience that challenges students to think outside the box and solve the global large-scale problems.
(既成概念にとらわれず、グローバルな大規模問題の解決に挑戦する驚異的な教育体験。)
● A better understanding of the global community and different cultures effects on each other.
(国際社会と異文化が互いに及ぼす影響について理解を深めることができます。)
● The diversity of ideas and communication skills in English were latent within me. With irreplaceable memories that can’t be changed by anything.
(英語での多様な発想とコミュニケーション力が、自分の中に潜在していました。何にも変えられないかけがえのない思い出とともに。)
● I really enjoyed my time with SIGLOC. I am so grateful for the opportunity to travel to Japan. The OMU students will forever have a special place in my heart. This class really deepened my global knowledge and social innovation which is extremely important.
(SIGLOCで過ごした時間は本当に楽しかったです。日本へ旅行する機会を与えてくれたことにとても感謝しています。OMUの学生は、私の心の中で永遠に特別な位置を占めるでしょう。このクラスは、私のグローバルな知識とソーシャル・イノベーションを深めるもので、これは非常に重要なことです。)
● 自分自身の文化について意外と分かってないこと、説明できないことがあると自覚しました。国際交流において大事なのは、英語力だけではなく自分自身の文化の知識も大事だなと感じました。
日米の学生が授業内外で活発に交流する、密度の高いプログラムになりました。
第14回 SIGLOC-JP における彼らの学びの様子を時系列で追ってみましょう。
2月8日(水) オリエンテーション
AUとOMUの参加学生および教員が一同に集まり、オンラインでのオリエンテーションを開催しました。
アンドリュース大学側は、2月上旬からタスクを開始。3月14日に来日し、OMUチームと合流します。
バーチャル・ランゲージテーブルで事前交流
OMUの参加学生は、バーチャル・ランゲージテーブル (通称:VLT) を通して、AU参加学生とZoomで会話をして、来日前から交流を深めました。
VLTは、大阪公立大学COIL推進室が運営する、米国学生とオンラインで楽しくカジュアルに文化・言語交流を行うボランティア活動の場です。→LINK
日本に来たらどこに行きたい、何を食べたい、など話が盛り上がり、まもなく日本で実際に会える期待がふくらみます。
3月6日 SIGLOC-JPスタート
担当の布施先生 (COIL特任講師) の指導のもと、OMUの参加学生は、大阪の基本情報や歴史、社会問題や災害など大阪について調査を開始。
アンドリュース大学が先に進めていたタスクに追いつきます。
3月14日 AU留学生が到着
アンドリュース大学の参加学生11名ならびに、Aaron Moushon氏 (学部教育副学部長) とLiz Muhlenbeck教授 (経営学部准教授) の合計13名が無事に関西国際空港に到着。
OMUの参加学生と教員が空港までお迎えに行きました。
学生はVLTで事前に交流があったものの、初めての対面に少し緊張の面持ち。
OMUの参加学生の感想
● 会った後は予想以上に緊張しており、上手く話すことが出来なかった。でも、難波までの電車移動中、大阪でしたいこと等、楽しみにしていることを話すことができて、少し緊張がほぐれて話せて良かった。
さあ、明日から約10日間、一緒にがんばりましょう!
3月15日 OMUで協働学習作業の開始
杉本キャンパスに到着!
経済学部棟のCA教室に全員集合し、いよいよSIGLOC-JPがスタートしました。
まずは、ひとりずつ自己紹介。
今回のSIGLOC-JPでは、「災害」と「リサイクル」の2つのテーマに焦点を絞りました。
学生たちは、災害チームとリサイクルチームに分かれ、それぞれのテーマに基づいて課題点を洗い出し、その解決策を見つけていきます。
AUとOMUのそれぞれのチームが、テーマに沿ってあらかじめ調査してきた自国の事情について、プレゼンを行いました。
3月17日 フィールドワーク1日目
リサイクルチームは、杉本キャンパスに集合し、「NPO法人日本もったいない食品センター」の高津氏より、食品ロスに関わるセンターの取り組みについて、Zoomでお話を伺いました。
賞味期限の設定の実情、賞味期限切れの食品の流通やフードドライブへの取り組みなどについての講義を聞き、日米共通点と相違点についても考える機会になりました。
ランチをとって、午後のフィールドワーク先に向かいます。
学生の感想
● お好み焼き屋さんに行った時、みんな同じテーブルに座りたいと言ってくれて6人でぎゅうぎゅうになってひとつのテーブルでご飯を食べました。狭かったけどすごく嬉しくていい思い出です!
災害チームは、阪神岩屋駅から10分程歩いた海沿いにある「人と防災未来センター」をたずねました。
早速、建物の外には、南海トラフ巨大地震が来た場合の最大津波高の想定、34.4mの表示があり、一同がゾッとしました。
阪神・淡路大震災の時に神戸に住んでいた中島先生から、当時の様子を聞く学生たち。
センターの中に入り、まずは、震災時の各地の凄まじい様子を集めた短編動画を視聴しました。
ショッキングな映像にみんな口数が少なくなってしまいました。
続いて、展示室へ移動し、被災した方々のインタビューや当時の資料を見て回りました。
最後のセクションでは、ボランティアの方々が、学生たちのさまざまな質問に答えてくださいました。
災害チームは、日本に住む外国人に対しての防災対策などについて熱心に質問していました。
また、実験ステージでは、免震構造や地震対策があるとき・ないときの揺れや安全性の違いなどを具体的に模型で実験して見せていただきました。
ランチをとって、次のフィールドワーク先へ向かいます。
さて、リサイクルチームは、午後は大阪の枚方市で家電リサイクル事業を行っている「関西リサイクルシステムズ (KRSC)」へ向かいました。
KRSCは、エアコンやテレビ、冷蔵庫、洗濯機などをリサイクルし、資源循環型社会を目指して取り組んでいます。
説明員の方々が、温かく迎えてくださいました。
まずは、家電リサイクル法や関西リサイクルシステムズでの処理の流れについて、ビデオを視聴し、説明員さんから解説を聞きます。
講義室を出て、エアコンとテレビのリサイクルについて説明を聞きました。
作業員の方が手を切らないように装着する鉄製の手袋。忍者の鎖帷子みたいです。
次に、家庭から排出された家電製品が、どのように再資源化されているのか実際の作業工程を見せていただきました。
作業場は騒音があるので、全員イヤホンを着けて、布施先生の逐次通訳で説明員さんの解説を聞きます。
作業場の中はものすごい音。
エアコン室外機の解体分別は、手作業も含めた複数の工程があります。冷却用のフロンガスは慎重にそして徹底的に回収。
回収されたガスの管理は、とても厳重でした。
冷蔵庫が粉砕機に運ばれ、一瞬で粉砕されて分別されていく様子をモニターで確認できます。
見学者デッキに移動し、冷蔵庫と洗濯機のリサイクルについて詳しくご説明いただきました。
さまざまな部分が分解され、仕分けされ、それぞれが再利用されており、そのリサイクル率の高さに一同驚きでした。
磁石の力などを利用して、パーツの仕分けを行う実験。
学生たちは興味深々。
最後に講義室に戻り、質疑応答。
丁寧にご説明いただき、本当にありがとうございました!
続いて、リサイクルチームは、午前中に講義を聞いた「NPO法人日本もったいない食品センター」が運営しているお店を訪ねました。
賞味期限が迫っている食品・賞味期限が切れても安全に食べることができる食品などを格安で扱うお店です。
お菓子や飲料、瓶詰、冷凍食品…など様々な食費が棚に並んでいました。夕方だったせいもあり、お客さんが次々に来ていました。
午前中の講義でも説明があった通り、専門知識を持った店員さんが「この食品はレトルトなのでまだ、数ヵ月は大丈夫なんですよ」「この瓶詰は、開封したらこんなお料理にも使えますよ」など、丁寧に説明とアドバイスをしながら販売しておられました。
学生の感想
● eco eatの店舗を実際に見に行きました。実際見てみると、期限が切れていても気にならないものばかりで、しかもほとんどが期限の切れているものではありませんでした。もっともっとこういったお店が増えればいいなと思いました。
一方、災害チームは神戸を後にし、大阪の阿倍野にある「大阪市立阿倍野防災センターあべのタスカル」に向かいました。
こちらは、体験型の防災学習施設で、災害発生時に身を守る方法や取るべき行動、救助の仕方や日ごろの備えなどを、実際の器材や装置を使用して総合的に学ぶことができます。
まずは、タスカルシアターで映画を鑑賞し、高さ6mの巨大スクリーンで災害の恐ろしさを体感。
続いて、災害発生直後から街に潜む危険や避難するまでの行動、減災について学びました。
要援護者を安全に避難させる避難支援
最後に、起震装置と映像により、マグニチュード7クラスの地震を体験し、地震の怖さを知りました。
続いて、災害チームは、日本で暮らす外国人がどのように災害情報を入手しているかやその改善点などついて調査するため、日本橋通りにあるベトナム料理店を訪ねました。
ベトナム人オーナー、従業員、お客さん、学生など計9名に、日本での災害の経験や、地域・会社・学校・政府などからの情報の入手方法、災害対策で苦労している点などについてインタビューしました。
3月20日 フィールドワーク2日目
この日は災害チームとリサイクルチームが合同でフィールドワークを行います。
大阪の地下鉄阿波座駅から歩いて数分の所にある「津波・高波ステーション」を見学しました。
ここでは、過去に起こった高波や、今後起こると予想されている大地震と津波についての知識を得るとともに、地震・津波発生時の対応などが学べる施設です。
まずは、研修室で職員さんから概要をご説明いただいた後、動画を視聴しました。
過去の台風の記録について説明を聞きます。
水都大阪の被害の詳細に、真剣に耳を傾けます。
大阪には海面よりも低い土地が多くあることを、実物模型で実感。
過去の高潮災害の被害を知り、高潮防災施設のはたらきを学びます。
この「津波・高潮ステーション」は、大阪府西大阪治水事務所が所管する防潮堤や水門の津波・高潮防御施設の一元管理も行っているそうです。
台風などで浸水が懸念されるときは、水防団が防潮扉を開閉してくれるのだそう。
命をかけて私たちの命を守ってくれているんですね。
次に、ある程度予測ができる「高波」とは異なり、細かな予測ができない「津波」の脅威について、過去の教訓から未来に活かす対策などについて学びました。
アンドリュース大学の学生からは、津波から身を守るためにはどうすればいいのか、熱心な質問がでました。
センターの方は「津波が来る前に逃げる」ことの大切さを繰り返し伝えておられました。
最後に、臨場感あふれる映像シアターで、津波の迫りくる体感と我々のとるべき対応について学びました。
学生の感想
● 日本人の私でもまだまだ知らないことがあり沢山のことを学べました。
特に津波に関しては、私は大阪市内に住んでいないから関係ないという考えではなく、津波が来た時に大阪市内にいるかもしれないという考えをもっておく必要があるなと改めて感じました。
津波・高潮ステーションの皆さま、ありがとうございました!
ウィーンの芸術家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏によってデザインされたゴミ処理場とは思えない特徴的な建物。自然界には直線や同一物が存在しないことから、各所の形状に曲線が採用されているそうです。
クレーンでゴミをかき混ぜて空気を入れ、燃えやすくするのだそうです。
その様子を見ながら、映画「Toy Story」を思い出したと皆口をそろえて言っていました。
これが実際にクレーンを広げたときの大きさ。思ったより大きくてみんな驚きました。
ゴミを燃やしたときに出来る熱をエネルギーとして利用し、電気を作って工場内の電気を全て賄っているそうです。出てくる気体も浄化をして水蒸気の状態で排出するため、この工場の煙突からは「煙」は出ていないと聞いて驚きました。
粗大ごみは、回転式破砕機で破砕され、分別されて焼却やリサイクルへ。
一通りの見学を終えて、説明員の方と記念写真。
この建物がたくさんの緑で囲まれているのは、自然との調和を象徴するようにとの建築家フンデルトヴァッサー氏の意図だそうです。
工場内部では、ゴミや蒸気、水、空気などが効率よく循環し、施設全体が環境に配慮した設計になっていることなどを学びました。
ありがとうございました!
3月22日 フィールドワーク後のキャンパスでの情報整理
グループに分かれて、フィールドワークで収集した情報を見直し整理をします。
最終プレゼンテーションで取り上げる課題を絞り込む話し合いでは、どちらのグループも熱心な意見交換が続きました。
お天気がよかったので、青空教室!
ブレインストーミングをしながら、課題の本質に迫ります。
色々な専攻の学生達が集まっているこのチームでは、全員で方向性を決定し方針に従って、それぞれの得意分野の作業を分担することに。
いよいよSIGLOC-JPも最終日となりました。
この1週間のフィールドワークとディスカッションを通して、各チームがとりまとめた課題とその解決策についてプレゼンを行いました。
どちらのチームも、直前まで最終リハーサルをしっかりと行っていました。アメリカ人の学生のプレゼンテーションが自信に満ち溢れているのは準備と練習のたまものです。
発表の後は質疑応答。相手チームからの質問が続きます。
セミフォーマルな服装で本格的なプレゼンテーションに臨みました。
すべての課題を修了し、参加学生一人ひとりにMuhleneck教授と中島教授から修了証が授与されました。
修了証を手に記念撮影。達成感と喜びにあふれる表情です。
「おわったー!」
10日間毎日一緒に過ごした仲間とのお別れ。
OMU学生は、サプライズでAUの学生一人ひとりにメッセージカードとプレゼントを贈りました。
笑顔、うれし涙、ハグ。
研修期間中、AU学生と沢山の楽しい思い出ができました。
3月24日 アンドリュース大学帰国
あっという間の10日間でした。OMU学生はオンラインで振り返りセッションを終えた後、アンドリュース大学の友達を見送るために関西空港に向かいました。
みなさん、よくがんばりました。ありがとうございました!